夏目坂の地下鉄早稲田駅に近い場所に、喜久井町という町域が広がっています。弊社がある原町の隣町です。この喜久井町という名も漱石にゆかりがあるそうです。
私の家の定紋が井桁に菊なので、それにちなんだ菊に井戸を使って、喜久井町としたという話は、父自身の口から聴いたのか、または他のものから教わったのか、何しろ今でもまだ私の耳に残っている。父は名主がなくなってから、一時区長という役を勤めていたので、あるいはそんな自由も利いたかも知れないが……(岩波文庫版、pp.66-67)
漱石の父親も面白い人ですね。私は喜久井町のバス停の前を通るたびに、この一節を思い出します。
今日の夏目坂は冷たい雨が降っています。